目的
世界自然遺産登録地の代表的固有種のアマミノクロウサギと人との諸問題解決のためには,本種のそもそもの生態や生息環境を解明する必要がある.アマミノクロウサギは天然記念物で希少固有種であるため,外来種対策(マングースや野生化イエネコ)が実施されてきたが,それらの効果によって,本種の生息数や分布は拡大し,本来の生息を回復しつつある.一方,人間活動と関わる諸問題が起きてきている.このため,本種の生態特性や生息環境との関係について解明や共存策を検討する必要がある.
これまでに野外における生態解明に取り組んできたが,本種の生態や生息環境との関係について,近年の最新鋭機材や分析手法を用いた解明が必要と考えている.そこで,本プロジェクトの目的は,アマミノクロウサギの生息地環境や生息地利用や個体関係などについて,非侵襲的な最新機材による方法と分析手法によって明らかにすることである.また,本種や生息環境および生態系を一般の方々に理解してもらうために,本プロジェクトの成果を用いて,普及活動を行うことである.さらには,その成果を諸対策に役立てることである.
内容
アマミノクロウサギが生息する森林域において,本調査研究のためのモデル地域(面積20-30haを3か所)を選び,最新機材を用いて定期的に調査を実施し,また飼育個体も用いて検証を行う.野外調査としては,ライトセンサス調査,糞調査(糞DNA調査も含め),センサーカメラ調査,音響調査などを定期的に行う.
これらにより,アマミノクロウサギの生息状況や生態的特性を解明し,とくにウサギ科で唯一の音声コミュニケーションの機能を解明し,生息環境との関係などを明らかにする.これらの成果を,人との間で起きる諸問題の解決の基礎的資料となりアドバイスに役立てる.並行して,これらの活動や成果を一般に普及啓発する.