2021年学校飼育動物アンケート

報告書

報告書


山田文雄ほか.2021.奄美沖縄世界自然遺産登録の島嶼における学校飼育動物の飼養実態アンケート調査報告書.島嶼生物多様性保全ネットワーク,90pp.


発行年月日:2021年8月31日

要旨

  • 世界自然遺産に2021年7月に登録された「奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島」において,新たな外来種問題を発生させないために,とくにペット動物の飼養実態を把握することはリスク管理上重要である.

  • 今回,学校飼育動物に注目して,世界自然遺産登録地の4島の幼稚園,小学校,中学校および小中学校115校を対象に,2021年4-6月にアンケート調査を行ない,94校(回答率81.7%)から回答を得た.

  • 動物を現在飼育している学校は54校(回答校の57.4 %)で,世界自然遺産登録地の「緩衝地帯」内に3校,「緩衝地帯」の隣接地に23校であった.また,環境省「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」の「緊急対策外来種」であるアカミミガメ(ミドリガメ)Trachemys scriptaと同リストの「重点対策外来種」であるカイウサギOryctolagus cuniculusやノヤギ(野生化したヤギ)Capra hircus,「その他の総合対策外来種」であるグッピーPoecilia reticulataの飼育も行なわれていた.

  • 人獣共通感染症,逸走した飼育動物による外来種問題についての認知度は比較的高かった.飼育の問題や課題として,従来からの指摘とほぼ同様に,獣医師との連携協力が極めて少ないことが明らかになった.

  • 今後,学校や教育委員会と獣医師会との飼育支援や協力体制の見直しや強化,外来種問題に関する普及啓発の充実が必要で,とくに世界自然遺産登録地の島嶼において,在来生物や自然生態系の保全,動物飼育の目的,飼育動物の逸走による外来種化,飼育動物の繁殖抑制,野生動物の感染症問題などの理解と予防対策を充実させる必要があると結論し提言をまとめた.

「2021年報告書印刷版」の正誤表(Web版は修正済み)

報告書印刷版に下記のとおりの修正箇所がありました.Web版ではすべて修正済みで,最終ページに正誤表を追記しています.修正後の報告書のファイルをダウンロードしてご利用ください.当方のミスとお手数をおかけしますことをお詫びいたします.

報告書印刷版の修正個所

1.P26表5:印刷段階で罫線が消失,本ファイルのとおりに訂正.

2.P66第2パラグラフ6行目:「・・・9月3日確認))しかし,」→「・・・9月3日確認)).しかし,」(句点追加)

3.P66第2パラグラフ10行目:「・・極めて低い(81.6%)」→「極めて低い(未利用81.5%)」

4.P66最下段から2行目:「・・(図18)で,」→「・・(図18),」(「で」を削除)

5.P72表33:印刷段階で罫線が消失,本ファイルのとおりに訂正.

6.P65第2,第3パラグラフの引用文献の著者名:鳩飼(2020)→鳩貝(2020)

7.P37図20の縦軸と凡例:縦軸の目盛りは上から,3は「知らない」,2は「知っているが,利用なし」,1は「知っていて,利用」を示し,凡例は左から右へ,系列1は「奄美大島」,系列2は「徳之島」,系列3は「沖縄島北部」,系列4は「西表島」を示す.

著作

「全国学校飼育動物研究会」会誌に掲載(2022年2月28日発行)

上記報告書の概要解説版

山田文雄ほか.2021.奄美琉球世界自然遺産地域の学校飼育動物アンケート.動物飼育と教育25: 39-47.


2021年4月1日

担当者 各位

島嶼生物多様性保全ネットワーク

                    代表     山田文雄

日頃より私どもの活動にご支援ご協力くださり厚くお礼申し上げます. 

 さて,私ども「島嶼生物多様性保全ネットワーク」は,世界自然遺産登録を控えて,島内のペット動物の飼育のあり方を考えるための基礎調査として,別紙のとおり,ペット動物飼養の現状を把握するためのアンケート調査を実施したいと考えております.

つきましては,貴職のご協力をいただけますよう,下記のとおりお願いいたします.


行事名:世界自然遺産登録候補地におけるペット動物飼養実態アンケート調査

趣  旨:奄美琉球世界自然遺産登録候補地の対象地において外来種問題となりうるペット動物の飼養や管理の状況,感染症を含む影響に関する実態を明らかにするために,教育機関(2021年4月),動物病院とペットショップ(2021年6-7月ごろ予定),住民(2022年予定)などを対象にアンケート調査を実施します.

主催者 島嶼生物多様性保全ネットワーク

後 援:環境省沖縄奄美自然環境事務所,鹿児島県,沖縄県,奄美市,龍郷町,大和村,宇検村,瀬戸内町,天城町,徳之島町,伊仙町,国頭村,大宜味村,東村,竹富町

アンケート対象地域:世界自然遺産登録候補地の「奄美大島」,「徳之島」,「沖縄島北部地域」および「西表島」.なお,必要な場合は他の隣接島嶼や地域も対象とします.


方 法

配布方法:教育機関へは,当方から教育委員会を通じ,幼稚園,小学校,中学校などに配布周知をお願いします.教育委員会と上局行政機関から当方は事前に了解を得ています.

回収方法

1.郵送の場合:別紙アンケート用紙にご記入いただき,返信封筒に入れて投函してください.

2.オンラインの場合:当方からお送りするe-mail内のフォームに直接記入していただくか,あるいは下記URLあるいはQRコードからアンケート用紙に入り,ご記入後にご返信してください.


要 領:記名方式で,質問項目は約30個,所要時間は15-20分程度です.

締 切2021年4月28日(水)までにポストへの投函,あるいはオンラインで返信してください.

調査結果の扱い:生物多様性保全とペットの適正飼養・管理の重要性に関する普及啓発活動,また関係行政機関への政策提言に活用します.いただいた情報は本目的のみに使用し,個人情報や個別機関情報の公表は行いません.集計分析結果は,報告書,論文,シンポジウム等で公表し,アンケート回答者にはフィードバックいたします.


問い合わせ先:ご不明な点やご質問がありましたら,下記までご連絡ください.

連絡先:「島嶼生物多様性保全ネットワーク」事務局

E-mail:山田文雄islandbdcngmail.com (@は小文字に変換してください),塩野崎和美islandbdcngmail.com (@は小文字に変換してください)

「奄美琉球の生物多様性保全をめざしたペットの適正飼養と管理に関する

普及啓発および政策提言」のためのアンケート調査の目的と方法

1.目的

島嶼の在来種・生態系は外来生物に対して極めて脆弱です.外来生物のうち,とくに外国産野生動物(エキゾチックアニマル)を含むペット由来の外来生物の実態把握は不十分で,法規制や管理も未整備のため,対策は喫緊の課題となっています.本調査活動では,生物多様性保全上重要な島嶼を対象に,生物多様性保全とペットの適正飼養と管理の重要性に関する普及啓発活動,そして関係行政機関への政策提言のために,ペットの飼養や管理の状況,感染症を含む影響に関する実態把握をアンケート調査で実施します.

2.意義

生物多様性保全に影響を与えるペットの飼養・管理の実態やペット由来の感染症リスク情報の整理はこれまでになく,琉球諸島の生物多様性保全を図るための外来種対策の一環として,住民や行政などの意識向上のために重要であり,かつ緊急性が高いと考えます.

3.背景

世界自然遺産登録候補地の奄美琉球諸島は重要な固有在来種や生態系を有し,これらの保全対策のために,外来種対策(マングース,ノイヌ,ノネコなど)が実施されています.しかし,多数の外国産野生動物(エキゾチックアニマル)を含むペットの飼育や野外への逸出による在来種・生態系への影響の実態は明らかになっていません.とくにペット由来の感染症とその影響については情報が乏しく,行政や一般社会の認識も低い状況です.

1)とくに注目されるペット由来感染症の事例としては,ネコ科動物を終宿主とするトキソプラズマの感染が希少種のアマミノクロウサギやアマミトゲネズミおよびケナガネズミでも認められており,またイエネコから野生ネコ科動物にネコエイズウィルス(FIV)やネコ白血病ウィルス(FeLV)の感染が知られており,さらに最近ではネコ科動物が新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に感受性の高いことも認められています.しかし,イエネコは屋外に普通に生息しており,屋内飼養の徹底には至っていません.また,ウサギ科動物の感染症であるミクソーマウィルスの受容体がアマミノクロウサギに存在することが知られており,またウサギウイルス性出血病(RHD)が北米で感染流行を起こしており,奄美大島や沖縄島北部(やんばる)などではカイウサギの遺棄が起きており,アマミノクロウサギへの感染が危惧されています.


2)このような事例からも,ペット全般についての飼養や管理の状況を把握し,また感染症リスクの情報を整理し,住民に対して意識向上を図り,行政に対して法制度整備を提案することが喫緊の課題であると考え,今回の調査実施にいたりました.

4.具体的活動イメージ

1)活動対象地域

世界自然遺産登録候補地の奄美大島,徳之島,沖縄島北部地域および西表島とし,対象とするペットは哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類ほかとします.

2)各島嶼におけるペット飼養の実態把握の方法

学校,販売店,動物病院などを対象に,従来から築いている関係性を通じての調査などによって,ペットの種類,飼育数などの情報を収集整理します.

3)ペットの感染症

文献調査や専門家のヒアリングを行い情報を整理します.

4)普及啓発活動

・これらの情報収集を通じて,学校の児童・生徒や住民に対して,生物多様性保全の意義や外来種の影響,世界自然遺産登録の意義に関する勉強会を実施し,ペットの適正飼養の重要性や外来種化の予防や対策について普及啓発活動を行います.

・上記の活動で得られた情報を集約整理し,パンフレットを作成し,シンポジウムなどを通じて普及啓発活動を行う.さらに,地元自治体や中央官庁に対する提言をまとめ,条例や法制度整備を働きかけます.

5)情報収集のための情報ネットワーク構築

本プロジェクトにより,ペット由来の外来種対策を具体的に策定するためのより広範な情報の収集整理,情報交換,住民対策,行政や中央省庁への提言の活動を継続的に行うための情報ネットワークを構築します.

5.具体的目標

1) 当面は各島嶼の学校におけるペット飼養の種類や数などの実態を明らかにします.その後,販売店のペットの種類や数などの実態を明らかにします.

2)各島嶼で問題となる可能性があるペット由来の感染症に関する情報を文献調査,専門家ヒアリングで明らかにします.

3)学校の児童・生徒や住民を対象として,世界自然遺産,生物多様性保全,外来種問題などについて勉強会やシンポジウムを開催し,ペットの適正飼養や管理の意識向上を図ります.

4)ペット飼養の実態や感染症リスクに関する情報整理しパンフレット(A4P10ほど)を作成し,対策や法制度整備に関する提言をまとめ,地元行政機関や中央行政機関の意識向上を図ります.

6. アンケート調査手法

学校などのペット飼養やペット販売の実態把握は,調査票の統一フォーマットを用いて,各島担当者(P.6参照)が中心になり従来から築いている関係性を通じて実施します.その際,島嶼の生物多様性保全の意義や外来種対策の重要性を説明し,普及啓発活動も行います.

・感染症については,国内外の文献や専門研究者への聞き取りなどから情報収集します.

・プロジェクトメンバー間において,Web会議を用いた情報交換や戦略構築の打ち合わせを行います.

・法制度整備については,地元行政機関や環境省との勉強会,また国会の院内集会などを通じて働きかけを行います.

・これらの活動の成果達成には複数年を要すると考え,実態把握には当初は各島担当者が従来から築いている関係性の高い島嶼や地域(奄美大島,徳之島,西表島,あるいは沖縄島北部(やんばる3村))で可能な範囲から実施し,調査方法や情報収集の方法の向上も検討し,情報量を増やしたいと考えています.

7. 公表予定

1. プロ・ナトゥーラ・ファンド助成国内活動助成報告書「自然保護助成基金助成成果報告書」

2. 地元勉強会,シンポジウムでの公表

3. 学会誌などでの公表

4. ほか

8.「島嶼生物多様性保全ネットワーク」のメンバー

山田文雄 責任者(代表)(沖縄大学)

石井信夫 副責任者(東京女子大学)

塩野﨑和美 会計責任者(奄美自然環境研究センター)

久野優子 奄美大島調査(一般社団法人奄美猫部奄美ネコ問題ネットワークACN)

鳥飼久裕 奄美大島調査(奄美ネコ問題ネットワークACN,奄美野鳥の会

美延睦美 徳之島調査(NPO法人徳之島虹の会

ほか


9.助成金

第31期(2020年度・2020年10月-2021年9月)プロ・ナトゥーラ・ファンド助成国内活動

タイトル:奄美琉球の生物多様性保全をめざしたペットの適正飼養と管理に関する普及啓発および政策提言

団体名:島嶼生物多様性保全ネットワーク

代表:山田文雄

連絡先:islandbdcngmail.com (@は小文字に変換してください)

10. 協力・後援

奄美大島(奄美市,龍郷町,大和村,宇検村,瀬戸内町),徳之島(天城町,徳之島町,伊仙町),沖縄島北部地域(国頭村,大宜味村,東村),西表島(竹富町),鹿児島県,沖縄県,環境省沖縄奄美自然環境事務所

11. 主なスケジュール

1)学校:2021年4月中

2)ペットショップ・動物病院:2021年6-7月

3)住民:2022年4-6月

4)ほか:

12.その他

・「Googleフォーム」を用いたWebアンケートを主に使用する

・郵送の場合は,アンケート用紙配布,返信用封筒(封筒作成,料金受取人払,返送先は「奄美ネコ問題ネットワークACN事務局」),

13.参考文献

小笠原村愛玩動物の適正な飼養及び管理に関する条例 | 小笠原村公式サイト

わかる学校どうぶつ飼育ハンドブック